俺だけのLovelyメイド
そう言ったと同時に、顔を上げた。



「……離さない」



──真面目な、声。

──真剣な、表情。


その言葉と共に、あたしの身体はもう一度東條の腕の中に抱きしめられていた。


いつもの、香水の香り。
あたしが、一番落ち着く香り。




「……なに……っ離して──」



「離さない」



あたしの言葉を遮って、東條は抱きしめる腕に更に力を込めた。



……なんで?
あたしのこと、好きじゃないくせに。

もう、あたしとは別れたくせに。


どうして、こんなことするの。




「──……ごめん、蘭……


ごめんな」




なんでまた──名前で呼ぶの。


『好きだ』とか言ったり、

『蘭』って名前で呼んだり。


どうして裏切るくせに、何度も期待させるの?
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