あなたの心を❤️で満たして
私が名刺を見たまま黙り込んでいたら、背後に立つ彼が教授に向かって声をかけた。


「火急の用件というのは何ですか？」


尋ねられた教授は、そうそう…と言いながら彼を手招き、パソコンの画面を指差しながら難しい話を始める。
こっちは戸口に取り残されてしまい、何処にも逃げ出せずに戸惑った。


ちらちらと視線を走らせると、私のことを興味津々な眼差しで見ている学生達と目が合い、それにどんな顔をしていいかも分からず、肩身が狭いな…と思いながら立ち竦む。

慣れないニオイと換気扇の音がする中で、まるで異邦人の様な気分を味わったーーー。



黒沢さんが用件を済ませ、私の居る場所に戻ってくるまで十分かそこらしか経ってなかったと思う。
けれど、私には三十分以上もの時間が過ぎたように感じられ、どっと疲れが出てしまった。


研究室を出て再び車に乗り込んだのはいいけれど、今更何処かに行きたいと思う気持ちも失せてしまい……


「すみませんけど、家に帰って貰えませんか？」


このまま以前住んでいた家まで送って欲しい。
要塞みたいな屋敷ではなく、田舎の一軒家みたいなあの洋風な家へ。


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