あなたの心を❤️で満たして
スマホの画面をタッチするのが見え、私はさっとパントリーから飛び出した。
いきなり廊下に現れた私を見つけ、ビクッと彼の背筋が伸びる。


「……なんだ。そこに居たのか」


安心したように息を吐く彼に無言で頷き近寄る。
唇を噛み締めている私の表情を確かめた彼が、不思議そうに首を傾けた。


「何か怒ってる?」


怒られる筋合いなんてない人が聞いている。
だけど、確かに今、私の胸の中はざわざわと落ち着きがなくて。


「黒沢さん、私に言いたいことがあるんじゃないですか?」


そう問い掛けると、彼はまたしても不思議そうに瞬きをした。


「言いたいこと?……あっ、ただいま」


「お帰りなさい…じゃなくて、挨拶以外のこと!」


つい乗ってしまった。
間抜けもいいところだと思い、直ぐに気持ちを立て直す。


「挨拶以外のこと?何だろう?」


彼は目が点になり、目線を上げてしらばっくれる。
こっちはそれを見てると堪らないほどムカついてきて、声を張り上げて訴えていた。


< 113 / 283 >

この作品をシェア

pagetop