あなたの心を❤️で満たして
「待てってば!」


大きな力強い手がぎゅっと手首を掴んだ。
捕獲された猫のような気分で、離して離して…と激しく抵抗する。だけど、返って力は込められ、とうとう黒沢さんが怒鳴った。


「離せる訳ないだろ!こんな時間に何処に行くつもりだよ!」


暴れる私を抑え付けるように両方の手首を捕まえた。
研究しかしてない人の力とは思えず、あっさりと私の腕は下ろされてしまい……


「何か勘違いしてないか?俺は教授の娘さんなんて会ったこともないぞ!」


一喝するように見下ろされ、もう一度唇を動かした。


「それに、その人ならもう既に結婚している!」



「へっ…?」


驚いて目が丸くなり、それを確かめた彼が私の手首を握る力を緩めた。


「確か県外に住んでいる筈だ。孫が出来たと数年前に嫌になるほど聞かされたよ」


「孫?」


「まだ信じられないか。それでもとにかく俺は教授の娘なんて知らない。見たことがないし、名前を聞いたこともないよ」


「でも、さっきの電話は……」


食い下がると彼ははぁーと深い息を漏らした。

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