あなたの心を❤️で満たして
私達、夫婦になれると思いますか？
翌朝、出勤してきた廣瀬さんに昨夜黒沢さんが言っていたことを教えた。


「まあ、そうだったんですか」


和田教授の娘さんが県外に住んでいると知り、廣瀬さんは改めて知った事実に驚いている。
私は頷きながら、そうなんですよ…と彼女に話し、黒沢さんが会ったこともなければ名前さえも知らないと言っていた…と語った。


「…じゃあ、あれは誰だったのかしら」


ぼそりと意味深な言葉を呟き、廣瀬さんはハッとしたように私を見直す。こっちは彼女の囁いた言葉の意味が分からず、ぽかんとしたまま見返していた。


「…いえ、何でもないんですよ。そうですか、顔も名前も知らないんですね」


一応納得したフリをして玄関先を掃きに行く。

私は彼女が誰と勘違いしたのかを考えようとしたけれど、それを思ったところで何かが変わる訳でもないんだと思い直し、とにかく美味しいと言われた味噌汁を作ることにしようと包丁を握る。


いつも出勤の小一時間前になると、黒沢さんはのっそりと起き出して来る。
半分眠そうに目を閉じながら歩いてきて、フラフラしながら椅子に座る。

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