あなたの心を❤️で満たして
それは家の売却金の入った銀行の通帳だった。
黒沢家の顧問弁護士をしている三上さんから預けられ、大金ですから失くさないように…と言われたのだ。


ドキドキしながら表紙を捲り、一枚目のページに記載された文字を見て、やっぱりそうだ…と目を見張る。


『フリコミ』と記された側に印字された名前。
それがあの人と同じ名前で愕然とした。




『ワダ カズヨシ』


どうして…と一瞬だけ思った。
その後でただの偶然?という思いが膨らみ、だけど…と思い返した後で、もしもそうなら…と思うと指が震えた。



(このワダさんは、ひょっとしたら和田教授のことでは?)


昨日の電話でのやり取りが思い出され、どうしてもそんな風に思えてしまう。

同じ引き出しから頂いた名刺を取り出して見比べ、薬科大学院教授の文字の下に印字された名前を見つめながら、居ても立っても居られなくなって電話をしてみた。





「もしもし」


三度目のコールの後、低めの声が聞こえてくる。
私は緊張のあまり直ぐには声も出せず、一瞬の間を空けてから名乗った。



「……あの…花び……」


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