あなたの心を❤️で満たして
「今、系列の大学病院に来とるんですよ。
大学院の研究室で開発した薬の臨床結果を持ってね。
それで、もうすぐ担当の医師と面接に入るんだが、話はそんなに長くもならないと思うので、良ければその後、院内でお会いしませんか?」


「病院は何処ですか?」


「薬科大から離れた場所に建つ大学病院ですよ。隣にリハビリセンターがある所です」


そこは私もよく知っている場所だった。
そこなら行き方も分かるし、大丈夫ですよ…と答えた。



「それでは後ほど」


電話口の向こうで教授を呼ぶ声がした。
担当の医師が手が空いたらしく、教授は素早く電話を切った。


無音になった画面の向こうを思いながら祖母のことを思い出していた。
教授が待ち合わせに指定した場所は、生前祖母が入院していた所なのだ。



「何を着て行こうかしら」


クローゼットの扉を開き、ベージュのワンピースを取り出す。
祖母の病院に行く時はいつもこれを着て行き、あまり目立たないようにしていたことを思い返した。


祖母のリハビリに付き合うのは結構ハードだった。…でも、それも体が動くだけで幸せだったんだと今では思える。


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