あなたの心を❤️で満たして
自分が家を出ると言っただけで心臓に悪いと言った彼は、実際に私が出て行ったとしたら、どんな反応を示すのだろう。



「こっそりそれを見てみたいな」


そう呟いてから人が悪過ぎるな…と思い直す。
タクシーを待たせてはいけないと足を進め、要塞のような屋敷を後にした。




三十分後、待ち合わせに指定された病院に着いた。

タクシー代金を支払おうと財布の口を開けたが、黒沢家の専属ですから…と断られ、そんな専属とかあるんだ…と知って驚く。



(…あ、ひょっとして…)


お披露目式の後、家まで送ってくれたタクシーもそうだったのか。
でも、あの時は黒沢さんが確かに代金を払っていたように思うけれど。



(…まあいいか、もう過ぎたことだし)


あれこれと考えるのも馬鹿馬鹿しくなって、私はお礼を言って降り、去って行くタクシーを見送った。

振り返ると懐かしい病院のロビーが見え、中では電話を掛けれないな…と思い、取り敢えずは外で連絡が来るのを待つことにした。


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