あなたの心を❤️で満たして
旦那様、貴方は……
家に戻ると廣瀬さんが出迎えに来て、ゆっくりお礼は言えましたか?と聞くものだから焦った。

はい、まあ…と答えて直ぐに部屋へと逃げ出し、私が出掛けたことを黒沢さんに伝えるのではないかと疑った。


彼に伝えられても別にいいのだ。
悪いことをしに行った訳ではないし、本当は和田教授に会いに行ったんです…と言ってもいい。


ただ、その理由を彼が家の購入者ではないかと疑ったからだと話してもいいのかどうか。

そんなことを調べてどうするつもりなんだと訊かれたら、この家を出たいから…と言わなくてはいけなくなる。


彼のお祖父様が折角用意してくれた家なのに、そこに馴染めないというだけで、元住んでいた家に帰りたいと思うなんて私の我儘でしかない。


それでも、ずっと我慢して住み続けられる程、自分に忍耐力があるとは思えない。
いつかは想いが溢れ返ってしまい、この家を飛び出すことになってしまうのではないか。


その時、彼はどうするだろう。
昨日のように私を追いかけてきて、心臓に悪いから止めようと言うのだろうか。



(紙きれだけの関係なのに?)


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