あなたの心を❤️で満たして
声をかけてきた人が私の方に手を伸ばす。
ビクッと仰け反りそうになる背中を抱いて、強く引き寄せられてしまった。


「心臓は要らないけど、留衣は要るから」


そう言うと腕に力を込められた。
ビクッとして体が固まり、そのまま息をするのを忘れた。



「……おやすみ」


挨拶すると、するり…と体が離れていく。
自分の部屋へと歩いて行き、何も言わずにドアを開けて入った。


その拍子にヘナヘナ…と腰が砕けた。
呆然としたまま彼のいなくなった方向を見つめ、暫くボンヤリとしていた。




「……何?……今の」


我に戻ると彼に抱き寄せられた感触が蘇ってきて、ドキン!と胸が跳ね、同時にブルッと指先が震える。


『心臓は要らないけど留衣は要る』


それはどういう意味だ。
あの行動からして、私の体が欲しいという意味なのか。



「ひょっとして彼は…」


もしかして、ずっと私を抱きたいのを我慢している?
私が何処か幼くて手を出すのを躊躇っている?



「あ……もしかして、この間のホテルって意味も……」


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