あなたの心を❤️で満たして
「留衣様、私がお泊まりの用意を致しますから、留衣様は奥様らしく、その方のお相手をお願い致します」


お伺いを立てるのではなく、そこはきっちり任せましたよ…といった雰囲気で言い渡す。
目ヂカラを込めて言われたせいで、こっちは具合が悪くて…と嘘も吐けない。


「……分かりました。行きます」


あーあ、全くついてない。
家出の準備が中途半端だ。


なるべく中が見えない様に、狭い隙間だけを開けて外へと出た。
廣瀬さんは満足そうに微笑み、その足で黒沢さんの部屋へ向かう。

私は彼女がドアを開けて入るのを確認し、重い気持ちを抱えたまま二階の廊下を歩き出した。


研究所の女性と黒沢さんは、職場の同僚という関係だけではないのだろうか。
廣瀬さんが勘違いするということは、それなりに一緒にいる機会がこれまでもあったということに違いない。


もしかして、嘗ての恋人とか。
ううん、現在もずっと付き合いが続いている人とか。

それで毎晩のように帰りが遅いんじゃないの?
私を抱かずに済んでいるのも、代わりにその人を抱いているからだったりして。


(それなら昨夜のアレは何?単なる揶揄い?)


< 154 / 283 >

この作品をシェア

pagetop