あなたの心を❤️で満たして
納得のいかない思いを胸に階段を降りようと玄関ホールを見下ろした。
三和土で待たされている女性は、両手を前で組み合わせて立ち竦んでいる。

緩くカールされた髪の毛が背中の真ん中辺りまであり、黒っぽいビジネススーツみたいな上下を着こなしている。
靴はヒールの高い黒のパンプスで、一見するとリクルートスタイルに近い。


上からだと顔までは見えず、ゆっくりと階段を下り始めた。

ストン、ストン…と足音をあまり立てずに下りたせいか、その人は私に気づいている様子もなく……



「お待たせして申し訳ございません」


どんな言葉を掛けていいか分からず、開口一番そう言った。
ピクッと肩を上げた女性が振り返り、顔を見るなりハッとした。



(き…綺麗……)


思わず目を見張るほどの美人。
瞼はくっきり二重で、肌は透き通るほどに白くて美しい。

アイラインが瞼の上下に引かれ、付け睫毛を盛った目元もちっとも変じゃなくて似合っている。
赤いルージュもケバケバしくないし、寧ろ血色が良さそうに見えて素敵だ。


息を飲む美しさ、というのはこういうのを言うのだろう。
呆然としたまま、思わず魅入ってしまった。


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