あなたの心を❤️で満たして
(おまけにさっきから気にかかるのは、このバサバサとして動かしにくい付け睫毛。やたらと重くて仕様がない)


マスカラまできっちり付いてるせいかやたらと重い。
外したい…と弱音を呟きたくなる心境で、隣に座っている旦那様の様子を窺った。



黒沢さんは私が振袖にも関わらず、自分はスーツを着ている。一応ラメ入りの素材らしく、ライトに照らされてキラキラと光っているけど妙だ。


(普通は和装には和装を合わさない?この人の感覚って変よね)


変と言えばさっきから少しもこっちを向かない。
真剣な表情でじっと前だけを見て、何を考えているのかもサッパリ不明な感じ。


(せめて少しでもいいから笑いかけてくれるとか、しないのかな)


私達、入籍したんですよね?と心の中で問いかけたくなる。今日が初対面だから、そういうのも難しいとは思うけど。



「……それでは、ここで新郎新婦の簡単なプロフィールをご紹介しておきたいと思います。先ずは新郎の黒沢厚志様ですが……」


開会宣言をしていた司会者の声に合わせ、彼がスッと背中を伸ばした。長身で細身の彼が、余計にノッポに見える姿勢だ。

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