あなたの心を❤️で満たして
教授は小さな声で、そう…と呟き、今話しても大丈夫ですか?と聞いてきた。


「構いません」


本当は一刻も早くこの家を出たい。
だけど、教授の話も気になる。


受話器に耳を押し当て、何でしょうか?とせっついた。手短にお願い…と胸の中で祈った。



「この間、大学病院で会った時に言っておりましたな。私が家の購入をしなかったか、と」


「…はい。しましたけど…」


ドキッとしつつ耳をすませる。
まさか何か知ってる?…と神妙な思いが湧いてくる。


「実はその件ですが、お話を聞いた時に少し迷いましてな、絶対に公にしてはいけないと言われておりましたし、実際のところ、私が家を購入した訳でもなかったものですから……」


歯切れの良くない言い方で、まだ話してもいいのかどうかを迷っているみたい。
でも、私はその話が知りたくて仕様がないから……


「お聞きしたことは他言しません。だから、どうか話して下さい」


受話器をぎゅっと握ってお願いした。
あの銀行の振込主が教授であることを願ったーー。


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