あなたの心を❤️で満たして
その言葉を聞いた瞬間、いつか掛かってきた電話のことを思い出した。

あの時、自分はパントリーに隠れていて、怪しげな電話の内容を勘違いして、彼に問い質したことがあるのだがーー。


(まさか、あれは女性のことじゃなくて家に関することだったの……?)


そう言えばあの時、黒沢さんは「彼女にはまだ話してない」とか「向こうの準備がまだ整ってない」とか言っていた。

同じように教授もその「彼女」というのが私で、「向こう」というのが、その登記簿に記された家のことだと思ったらしくてーー。


「黒沢君の言い方だと奥さんは何も知らないのだな…と思っておりました。だから、話さない方がいいのかと思っていたのだが……」


大学病院で私から家の話を持ち出され、なんだ、知っているのかと思ったらしく。


「それなら内緒にしておく必要もない気がしましてな。小耳に挟むくらいなら良かろうと思い、お電話を差し上げた訳なんですよ」


「そ…そうなんですか。それはどうもありがとうございます……」


お礼を言いながら頭の中が混乱してくる。

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