あなたの心を❤️で満たして
「お坊っちゃまは、ああ見えて本当に有能な研究者なんですよ。どんなお薬を研究開発されているのか、それを知ることも大事です」


自分も行きたそうに腰を上げ、善は急げとばかりに出かける準備を始めて下さいと言い出した。


「留衣様、今日だけは明るい色の服を着て行って下さいね。家の中にいるのとは訳が違いますからね」


この家に来てから、毎日暗い色の服ばかりを着ているのを気にしていたみたい。
私としては祖母のこともあり、四十九日が過ぎるまでは明るい色の服は着たくもなかったのだけれど。


「分かりました。少し明るい色の服にします」


そう言って自分の部屋へ向かう。
明るい色の服なんて持っていたかな…と悩みながら階段を上がった。


部屋のクローゼットを開け、足元に置いたスーツケースとバッグを見遣る。
この荷物をまとめてから三日間、出るに出られず日が過ぎている。

黒沢さんはまるで私が家出をするのを分かっていた様な感じで戻らないし、私は私で家出をするタイミングをすっかり逃し続けている。

< 172 / 283 >

この作品をシェア

pagetop