あなたの心を❤️で満たして
捻くれてそう思っていると、付け加えるように「お似合いです」と言う。
褒められているようだけれど素直に聞き入れることが出来ず、そうでしょうか…と囁いた。


その声と同時にエレベーターは3階に着き、蒲池さんは「お先にどうぞ」と言って手を差し出す。
遠慮がちに出ると後から付いて出て、此方です…と言いながら歩き出した。


白いタイルが敷かれた廊下はまるで病院内のようだ。
研究所らしいと言えばそうなのだろうけれど、やっぱり何処か寒々しくて冷たい感じ。
あの要塞屋敷と変化なく、ちっとも他所へ来た気分になれない。


(家の中も職場も変わらないじゃない)


これじゃあ本当に病みそうだと思いつつ、背の高い彼女の後ろを付いて行った。


廊下の横には磨りガラスの付いた窓が並んでいる。

蒲池さんの説明では、企業秘密の研究をしているチームもありますので…とのことらしいが、何とも物々しい雰囲気だ。

住んでいる家以上に機密性が高くて、こんな所にずっと居られる黒沢さんは、ある意味変わってるな…と思った。



「此方が主任の研究室です」

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