あなたの心を❤️で満たして
でも、彼には私みたいな妻よりも、共に研究に立ち合えてそれを理解できる蒲池さんがいるからいいよね。


「……これ、折角作ったので皆さんでどうぞ。美味しいかどうかは分かりませんけど、頂いて下さい」


重箱を包んだ風呂敷をテーブルの端に置き、顔を上げれない黒沢さんに目線を戻して胸が痛む。

でもーー



「…お大事に」


それしか言う言葉が見つからなくて、サッと背中を向けて立ち去ろうとした。
蒲池さんは「奥様!?」と呼び、だけど、私が振り向かないでドアノブに手を掛けるとーー


ガタ…と椅子の音がして、何気なく振り向くと彼がこっちを見ていて……


「留衣……待て……」


そう言った途端、黒沢さんは床の上にダイブする格好で滑り落ちた。


「主任っ!」

「きゃああ!」


私は大声を張り上げた。
足元に倒れ込んだ彼に引き寄せられるように膝を折り、「黒沢さん!」と叫ぶ。

ぎゅっと白衣の肩辺りをわし掴み、しっかりして!と訴えれば、彼はまるで最後の力を振り絞るかのように指先を動かして、ゆっくりと私の腕にその指先を引っ掛け、辛そうな表情を見せつつも笑いーー


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