あなたの心を❤️で満たして
遺産を守る為に三上弁護士が立てた今後の計画を話すと応じ、預かった書類に俺の介助で判子を付いた。


『もう…これでいつ死んでも本望……』


固まった表情筋を少しだけ緩ませて安堵した。
それから深く息を吐き、はっきりとした声で願った。


『…どうか、舞い散る桜の花弁のように……あの子に愛を……注いで下さい……』


涙ぐみつつ言い残した最後の言葉を胸に抱き、俺は病室を去った。


花菱珠恵さんが亡くなりました…と報告を受けたのは、それから三ヶ月くらい経ってからだーーー。


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ふ…と目覚めると辺りが薄暗かった。

まだ夜更けか…と思いつつ体を起こそうとすれば布団に重みを感じて動きにくい。

何故だ…とぼんやりとした頭で考えながら目を向けると、寄り添ったままでうつ伏せている女性がおり……。


(誰だ……?)


ストレートの黒髪に淡いピンク色の服。
静かに寝息を立て、肩が規則正しく上下している。


「留衣……?」


そう呼んで、そう言えば目覚める度に誰かが側にいる感覚があった…と思い出した。

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