あなたの心を❤️で満たして
睡魔が強過ぎて半分夢だと思っていたがーー。


ちらっと枕元にあるミニテーブルに視線をずらせば冷えたインスタントの味噌汁が置いてある。


(…ああ、そう言えば夢の中で一口飲ませてくれた……)


苗字を呼んでいたから留衣だと思ったんだ。
味噌の香りと鰹節の風味が口の中を湿らせてくれた。


彼女に視線を戻し、起こすべきだよな…と呟いたが、何だかそれも惜しい気がしてきて、そのまま暫く寝顔を眺め続けていた。


寝ている間に彼女の祖母と話をした時のことを夢見た。
自分は要らない子供だと思いながら留衣は育った筈だ…と祖母は話していたがーー。


「要らない人間なんていないよ、留衣…」


生まれてきたからには意味があるんだ。
少なくとも俺はそう思って生きてる。


手を伸ばして頭を撫でた。
柔らかい猫のような髪の毛は艶があって綺麗だった。


(可愛いな。まるで子供みたいに純粋無垢で……)



あの入籍した日に再会したにも関わらず、俺に「初めまして」と挨拶した留衣。

少なからずそれがショックで、何も答えずにいたのはマズかった。


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