あなたの心を❤️で満たして
(まさか顔を忘れられるなんて、今までなかった経験だからかな)


我ながら心が狭いと呆れ、留衣…と名前を呼びながら肩を揺らす。
ん…と吐息の様な声を漏らした彼女が顔を横に向け、眉間に皺を寄せてまた寝ようとしている。


「留衣……風邪を引くよ」


寝るならベッドに入れば?なんて、いきなり誘ったら逃げ出しそうだ。


「留衣…」


トントンと少し強めに肩を叩いた。
嫌そうに唇を尖らせた彼女がムッとしたまま目を開け、それを覗き込むようにして見れば、瞳が大きく見開いて飛び跳ねるように起き上がった。


「く、黒沢さん…!」


緊張が戻ったかのように苗字を呼ぶ。
だから、君も黒沢だろうと言いたくなったが、まあいいか…と思い諦めた。


「どうして瑠衣が此処に?俺はいつ眠ったんだ?」


そう言うとあんぐりと口を開けた彼女が「呆れた」と一言囁き。


「私がお弁当を持ってきたら、いきなり寝落ちしたんですよ」


覚えてませんか?と問われ、記憶の端っこに引っ掛かっていたことを思い浮かべた。


「……ああ、そう言えばそうだったか。あの時既に草臥れてたから忘れてたよ」


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