あなたの心を❤️で満たして
その言葉と共に唇を奪われた。
優しく触れた後で、離れていくのが惜しそうにもう一度しっかりと押し当てられて……




「……ごめん。ついしたくなった…」


唇を離すと照れくさそうに彼が言い、背中を伸ばすと歩き出す。


「…………」


その体を支えながら、何も言えずに足を運んだ。

バクバクと鳴る心音だけが、やたらと大きく耳にこだましていたーーー。





要塞屋敷に戻ると、私達はいつも通り別々の部屋に入った。

入ってからも私は彼の唇の感触が忘れられず、思い出す度に胸が鳴って仕様がない。

車内では辛うじて平気な顔をしていたけれど、実際は黒沢さんの横顔を見ることも出来ず、ただ助手席側の車窓を眺める続けるだけに留まったーー。



「おやすみ」


自分の部屋の前でそう言われた瞬間、きゅん…と切なそうに鳴る胸の音を聞いた。
同時にバクバクとまたこだまして、どうかしてる…と考えた。


私達は入籍してからもずっと別々の部屋で眠っている。

紙だけの夫婦でいいと思ったことは一度もないけれど、いざ彼に唇を奪われたら、自分がこんなにも動揺するなんて思わなかった。


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