あなたの心を❤️で満たして
住所は覚えていなかったから三上弁護士に訊ねたと説明する。

要塞屋敷からどのルートを辿れば早く着くかをネットで検索して、都市高速に乗れば近いことを突き止めた。



「でも、あまり乗ったことがないからおっかなびっくりでさ」


話を振り出したのに止めて悪かったと謝る。
黒沢さんは私が思うよりもずっと喜怒哀楽がある人みたいで、やっぱりロボットではなかったのだ…と安心した。



「嬉しい?」


私が無言のまま彼の横顔に見入っていた所為だろうか、フッと口元に笑みが浮かんでいる。


「はい!そりゃもう!」


何度あの家を恋しいと思ったか知れない。
あの殺風景な要塞屋敷の庭を見る度に、裏庭にあった桜の木を思い出してばかりいた。



「そうか」


黒沢さんの横顔も嬉しそうに見える。
私は涙が溢れそうになって、それでもやっぱり泣いたら駄目だと思い、ぐっと歯を食いしばった。


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