あなたの心を❤️で満たして
懐かしい家への道は変わらなかった。

要塞屋敷へ続く道とは違い、道路脇に並ぶ家の塀も低くて、庭には様々な木々や花が植えられている。

大型店舗も並んでないし、スーパーだって少し歩かないと着かない。
生活するには確かに少し不便な場所だけれど、代わりに自然が溢れた彩り豊かな所だ。


私は涙を我慢したまま、車窓に目を奪われていた。
何処もかしこもつい最近まで見て歩いていたのに妙に懐かしくて、そして、やはり此処が好きだと感じていた。


「あ…」


家に続く角を曲がった時、思わず声が漏れ出した。
私の声を聞いて黒沢さんが「間もなく着くよ」と言い、それに振り返って頷く。



(家に着いたら全てを訊ねてみよう)


そう思うと胸の鼓動が増してきて、ドキドキする気持ちを抑えるように手を握りしめた。


家の前で車を止められ、急いでシートベルトを外して出た。
幼い頃、祖父に手を引かれて着いた家は、変わりもなくその場所に建っていたがーー



「え……」


ポカンと呆気に取られてしまう。
目の前に見えている家には、無数の足場が組まれていて。


(どういうこと、これ…)


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