あなたの心を❤️で満たして
旦那様、私は……
(まさか、お祖父ちゃん……?)
そんなことはないと思いながらも、目はその人を捉えて離さない。
見開いたまま足が止まり、呆然とその場に立ち尽くした。
「留衣?」
その人に背中を向けている彼は、ぼんやりと佇む私の名前を呼ぶ。
それが聞こえたかのように後ろに立つ人が振り向き、私は顔を見て驚いた。
「……パ…パ……」
幼い頃、そう呼んでいた人だ。
あの頃はどちらかと言えば祖母に似ていたのに……。
「留衣…?」
向こうも私だとは思えなかったらしい。
そりゃそうだろう。
だって、会うのは何年振りか分からないくらい久しぶりだもの。
「…留衣か?!」
名前を呼びながら近づいて来る。
私は足が震えて逃げ出したいのに逃げ出させない。
今更会いたくもないのに何。
どうして此処へやって来たの。
目を動かしもしないでその人のことを睨んでいた。
胸の奥から、憎しみとか怒りが湧いてきそうなのを抑えて。
黒沢さんは背後から来る人の足音に振り返る。
姿を確認すると向き直り、どなたですか?と声を掛けた。
「そう言うあんたこそ誰だ」