あなたの心を❤️で満たして
思いきり顔が引きつった。
自分の両親の顔すら知らない私に、一体どんな顔をしておけと言うの!?



(笑うのよ留衣。とにかくニコニコとしておけばいいの)


ここまで散々微笑んできて、頬の肉すらも張って強張り始めているのに更なる追い討ちをかける。

会場のスタッフに持たされた花束は想像以上に重くて、腕の筋肉までがプルプルと震えた。



「…はい」


黒沢さんは育ててくれたお礼も言わずにお母様に花束を渡している。
受け取る方も慣れた感じで、「ありがとう」と和かな笑みを浮かべる。


(親子ってこうもアッサリとしたものなの?)


呆れていると、お嫁様の番です…と介添えスタッフが声をかけてきた。

ドキン!と心臓が跳ねて前を見ると、黒沢さんよりも少し背の低い中年層の男性が目の前に立っている。


お父様だと思われる人は、柔らかそうな焦茶色の髪の毛が少しウエーブしていて、それを綺麗にセットされていた。

目元は何処となくだけど黒沢さんに似ているような。
でも、彼の顔を正面から見てもないからハッキリとは言えないのだけど。


< 23 / 283 >

この作品をシェア

pagetop