あなたの心を❤️で満たして
壁の様に立つ人を見上げる。
これまでロボットの様に感じていた背中を見つめ、きゅん…と胸が熱くなった。
「帰って下さい。そして、二度と此処に来ないで」
「黒……っ!」
声を発しようとしたら、それを後ろ手に回された手が止めた。
ビクッと背中に触れる手の感触に押し黙り、身じろぎもせずに見守っているとーー
「…チッ!」
舌を打つ音が聞こえ、父が歩き出す足音がしてくる。
去って行く姿を見せないようにしているのか、黒沢さんは追うように体の向きを変えた。
遠退く足音と共に私の背中に回されていた腕が離れる。黒沢さんは小さく溜息をこぼし、私は彼になんと言っていいか分からず、その後ろ姿を見上げていた。
「……留衣」
向き直ると彼は私のことを見下ろしてきた。
その眼差しから目を離せず、じっと見つめ返した。
「これから先、もしも今日みたいなことがあっても決してお金を貸したら駄目だ。あの通帳に残されたお金は、全部留衣に渡るようにして欲しいと祖父も俺も頼まれたんだから」
「…誰に?」
真剣な表情をする黒沢さんに問うと、彼はグレーのシートで覆われた家を見上げた。
これまでロボットの様に感じていた背中を見つめ、きゅん…と胸が熱くなった。
「帰って下さい。そして、二度と此処に来ないで」
「黒……っ!」
声を発しようとしたら、それを後ろ手に回された手が止めた。
ビクッと背中に触れる手の感触に押し黙り、身じろぎもせずに見守っているとーー
「…チッ!」
舌を打つ音が聞こえ、父が歩き出す足音がしてくる。
去って行く姿を見せないようにしているのか、黒沢さんは追うように体の向きを変えた。
遠退く足音と共に私の背中に回されていた腕が離れる。黒沢さんは小さく溜息をこぼし、私は彼になんと言っていいか分からず、その後ろ姿を見上げていた。
「……留衣」
向き直ると彼は私のことを見下ろしてきた。
その眼差しから目を離せず、じっと見つめ返した。
「これから先、もしも今日みたいなことがあっても決してお金を貸したら駄目だ。あの通帳に残されたお金は、全部留衣に渡るようにして欲しいと祖父も俺も頼まれたんだから」
「…誰に?」
真剣な表情をする黒沢さんに問うと、彼はグレーのシートで覆われた家を見上げた。