あなたの心を❤️で満たして
離婚して家を出る時も本当は君を連れて逃げたかったそうだよ。だけど、どうしてもお父さんが君を手離さなかったらしい」


「父が?」


愛されてたの?一瞬だけそう思った。けれどーーー


「お祖母さんの話では、君を手元に置いておけば親からの支援が受けられると思ったんだろうって…」


なんだ…やっぱりそうか。


期待することでもない。
昔も今も、やっぱり私は要らない子供なんだ。



(そんなこと…分かりきってた……)


だから、せめて祖父母にとっては必要な人間でいようと必死だった。
優しくしてくれるのにも意味があるんだと思って、その優しさを裏切らないように我儘も言わずに生きてきた。

寂しいも辛いも口にせず、只々、ひたすらに自分の存在を認めたくてーーーー。



「私……」


ぼろり…と大粒の涙が落ちて、慌てて拭った。
彼の前で泣くなんていけない。
隠してきた気持ちを見せては駄目だ。


「…そ、そうなんですね。父にとっては、私は人質みたいな存在だったんだ…」


愛する対象じゃなかった。
ひょっとしたら、祖父母にとっても同じだったのかもしれない。


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