あなたの心を❤️で満たして
「……要らない…人間だった……」


そう呟くと嫌になる。
誰にとっても何かの道具みたいな気がしてくる。


「そんなことないよ」


黒沢さんはそう言うとぎゅっと私を抱き締めた。
包むように胸に顔を埋めても私の気持ちは盛り上がらなくて。


「留衣は要らない人間なんかじゃない。お祖父さん達にとっても俺にとっても、十分価値ある存在だ」


それは定期的に体を繋げる為じゃないの?
紙の上だけの関係を今更止めることが出来ないだけじゃないの?


「黒沢さん…」


抱き締められても胸が切なくなるだけで喜びすらも感じない。
どんどん気持ちが冷めていくばかりで、涙が溢れそうなのを堪えるのが必死で。


彼の言葉を信じたくても信じきれない。
まるで感情のないロボットみたいな感覚で、何も心に響いてこない。


それは感情を押し殺して生きてきた所為なの?
愛情を知らずに育ってきた所為?


嫌われない様に必死でいい子を演じてきた所為?
優しさを失いたくなくて、ずっと我慢を続けてきた所為?


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