あなたの心を❤️で満たして

だけど……本当は、誰かに愛されたかった。

嘘でも幻でもいいから、誰かに好きだと言って欲しかった。

裏切られたり捨てられたりせずに、見守られて包まれたかった。

愛を………教えて欲しかった……。


愛を……



「………うっ……っく………」


泣くつもりもないのにどうして。
誰にも見せないつもりでいたのに何故。



(寂しい…)


そう思うとぎゅっと服を握っていた。
黒沢さんの体をいつの間にか抱いていて、その抱いた手をぎゅっと握り締めていた。



「留衣……」


黒沢さんは名前を呼ぶと髪を撫で始める。
その手が優しいから私は涙が溢れ返ってしまい……



「…う…う……う……あ……うあぁぁ〜〜ーっ!!」


大声を上げて泣いたのなんて初めてだ。
幼い頃、怒りにも似た感情を父にぶつけて泣いた時と同じ。


だけど、今は怒りよりも悲しくて。
吐き出せなかった感情の全てを涙に込めているような気がした。


誰にもぶつけられずにいた。
寂しさも怒りも切なさも全部、誰にも吐き出せなかった。


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