あなたの心を❤️で満たして
「は…初めまして。留衣と申します。…今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます」


声が上ずって震えてしまう。
オドオドしながら花束を手渡し、それを受け取った黒沢さんのお父様は、紳士な態度で対応をしてくれた。


「此方こそ息子がお世話になります。研究の虫でつまらないかもしれないが、どうぞ末長く付き合ってやって下さい」


隣にいるお母様も近寄り、「お願いしますね」と声をかけてきた。

私は顔も忘れた両親のことを思い浮かべ、こんな優しい人達なら良かったのに…と思い、胸が熱くなってしまった。

目頭が潤みかけて、ぎゅっと奥歯を噛みしめる。
今日からは泣かないと決めた。
だから、ここでも泣かずにいよう。


「…よろしくお願い致します」


深々と頭を下げて上げると、ご両親が微笑んでいるのが見えた。
やっと少しだけ安堵して、ふと視線を感じて隣を見れば。


今日会ってから初めて黒沢さんと目が合い、その目元が凄く優しそうに微笑んでいるから驚いた。



（わぁ……こんな顔する人なんだ……）


< 24 / 283 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop