あなたの心を❤️で満たして
何？と声を出すと湯気が揺れ、その流れる様子を見つめながら最初に何を聞くべきだろうかと思案した。



「黒沢さんは…」


そう言いかけて思い出した。
自分も黒沢なんだからいい加減に名前を呼ぼうと思ったのだった。


「あ…つし…さんは…」


いざ言うと緊張してしまい、たどたどしい呼び方になってしまう。

顔が熱くて首筋も熱い。
彼と視線が合わせづらくなって、俯き加減に訊いた。


「どうして…私と結婚しようと思ったんですか？」


いきなり入籍から始まった私達。
私には寝耳に水のことだったけれど、あのホテルの控え室に入ってきた彼は、そこで婚姻届にサインをすることを分かっているような感じだった。


手にしていたコーヒーをゴクンと飲み込む喉の音が聞こえ、ドキッとしつつも俯いたままでいる。
ドキドキ…と速鳴りを始める心臓に、落ち着けと言いたくなった。


「んー、そろそろ潮時かなぁ…と思って」


「は？」


妙な答えに顔を上げると、黒沢さん…じゃない厚志さんは、平然とした表情でこっちを見ている。

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