あなたの心を❤️で満たして
「だからと言って誰とでもいいとか思ってないよ。ちゃんと入籍前に留衣にも会いに行ったし」


「えっ?」


「やっぱり覚えてないんだ。ちょっとショックだなぁ」


笑いながらコーヒーカップを持ち上げ飲み干している。
ぽかんと眺めていると、カップを受け皿に置いてこう言った。


「医局の大森医師を覚えてる?」


「大森先生?…はい、よく覚えてます」


明るくて面白い医師だった。イケメンではなかったけれど気さくで誰にでも愛想が良くて。
時々院内で声をかけられ、祖母はどう?と訊ねられた。


「大森先生が何か?」


首を傾げると困ったような顔をする。
ますます意味が分からずにいたら、残念そうに息を吐いた。


「一緒にお祖母さんの病室に伺ったことがあるんだけど」


「お祖母ちゃんの病室に?」


祖母の部屋には毎日いろんな人が出入りしていた。
ナースや担当の医師は勿論、PTやOTもリハビリに来てくれていて。


「その時、薬品会社の人として紹介してもらったんだけど」


「え……あ……そうでしたか?」


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