あなたの心を❤️で満たして
自問を繰り返している時だ。

いきなり電話の着信音が流れ出し、ビクッとすると同時に厚志さんはポケットからスマホを取り出して仕様がなさそうに溜息を吐いた。




「もしもし?…ああ、どうした?」


ソファから立ち上がると窓辺に近寄って話しだす。

誰とも言わないけれど言い方がタメ口の様に聞こえるから、多分和田教授ではないことだけは確かだ。



(…誰?もしかして蒲池さん?)


背中を睨むように見てしまう。
やっぱりただの同僚なんて嘘で、本当は男女の関係なんじゃないの?


「…うん、それで?」


一向に終わらない話のやり取りを聞きかじるのも嫌になり背中を向けた。

目の前にはドアがあり、そのレバーを下ろせば廊下へと出られるのだけれど……。



(どうする?出て行く?)


くっ付かないでと言うのなら、今夜は別々に寝た方がいいのかな。やっと寂しさから解放されると思っていたけれど、それはもっと先のことになるのかも。


(覚悟ならしてるのに…)


あのホテルで婚姻届にサインをした時からある程度の覚悟はしている。

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