あなたの心を❤️で満たして
「本日はようこそおいで下さいました。黒沢厚志です」


初めまして…と手を出すと、顔を強張らせていた人はオドオドとしながらもその手を軽く握り返した。


「中本由実(なかもと ゆみ)です。初めまして。本日はおめでとうございます」


母とは名乗らず、今の姓名を言った。
その様子を見つめ、私は唇をぎゅっと噛んだ。


「ご主人様は?」


「今は別室で控えております」


少しだけ緊張が解けたように微笑み、厚志さんの手を離すとその視線は私の方へと向けられた。

よく見ると目元の辺りが自分とよく似ていて、明らかに血縁者なんだと分かるけれどーー。


「留衣」


その声を聞いても感動もしなくて、寧ろ変に怒りが湧いてきて……


「お式にご招待してくれてありがとう。とっても…嬉しかったよ」


優しく微笑みながら囁いているのだろうと思う。
だけど、私の胸の中にある蟠りは消えるどころか膨らんでいってーーー



「……どうして」


そんな風に何もなかった様な顔で言えるの?
ずっと長い間、自分が手紙を書いてきてたから?


< 276 / 283 >

この作品をシェア

pagetop