あなたの心を❤️で満たして
(こんな場所に住むのかな)


何だかホームシックにかかりそうだ。
前に住んでいた場所が恋しいと思いながら、あの桜の木を思い出していた。



「そこを左に曲がって下さい」


彼が運転手の背凭れに近寄り、入る通りを指定する。
言葉通りにタクシーが曲がると、車窓の景色は住宅街へと移り変わった。



(わぁ…大きな家ばかり)


見るからに高級そうな住宅ばかりが並んでいる。
庭が凝っていたり、建物が個性的でハイセンスだったり。

中には武家屋敷みたいな和風の家もあったりして、それなりに見るだけなら楽しめたりもするのだけれど。


(…でも、やっぱり緑が少ないな)


あると言えば街路樹か庭の樹々くらい。
後はまるでセメントと石だけで造られた街のように見える。

こんな場所でこれから毎日暮らすのだろうか。
まるで軍事基地みたいで、呼吸も楽に出来そうにないけれど……。


不安を募らせながら何処まで走り続けるのだろうと思い始める。
道なりに真っ直ぐ行くと、そのうち住宅街の天辺に着いてしまうが。


じっ…と道の先の方へ目を遣った。
天辺の辺りには、大きな塀で囲まれた家が見えている。

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