あなたの心を❤️で満たして
まるで司令塔みたいな雰囲気で、見た目は正に要塞としか思えない。


(まさかとは思うけど、彼処じゃないよね?)


だったら嫌だな…と思う気持ちと、絶対に違うと信じたい気持ちとが入り混ざる。

だけど、そこに着くまでは黒沢さんも止めて欲しいとは言わないし、嫌だと思っていてもやっぱり家は確実に近づいて来る。



「あ、ここで」


家の真ん前ではないけれど、少しだけ手前で止めてくれた。


(良かった。やっぱり違うんだ)


ホッとしていると、先に降りていいよ…と言われ、自分側のドアが開いているから、それでは…とばかりに足を外へと出した。


スーッと涼しい風が足元を吹き抜け、春の夕暮れらしく少し肌寒いなと感じる。
体全体を車外へと出してみると、思っている以上に風が強く吹いている。



「どうもありがとうございました」


運転手の声が聞こえ、徐ろに振り返って見れば、ドアの縁で頭を打たないようにしながら腰を折るようにして外へ出て来る黒沢さんの姿があり……。


「どうも」


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