あなたの心を❤️で満たして
インターホンが切れて私は彼を見つめた。
家の中で誰かが待っていて、これから出迎えに来るようだ。


（誰…？）


キョトンとしていると、ガチャリとドアのロックが外れる音がした。
板チョコ色の重厚そうなドアが中へと開き、黒沢さんは私を先に入れようとして前を譲った。



「え…？あの…？」


オロオロすると、ドア越しからひょっこりと顔を出してきた人がいて、ビクッとなりながらその人を見た。


「まあまあ。ようこそお帰りなさいませ。この家のハウスキーパーを致します、廣瀬（ひろせ）と申します。奥様、今日から宜しくお願い致しますね」


「奥様？」


誰のこと？と首を捻る。
誰も何も此処にいるのは私と彼女以外、女性はいないのだけれど。


「どうぞお入りになって下さい。お疲れになられましたでしょう」


私は廣瀬さんと名乗った人を見直し、それから隣に立つ黒沢さんを見返した。
「どうぞ」と言い放つ彼の声に合わせ、おずおずと前に進んだ。




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