あなたの心を❤️で満たして
後ろから黒沢さんが玄関に入ると、廣瀬さんはドアを閉めて奥へと歩き、スリッパラックからブルーとピンクのスリッパを取り出して並べ、「お上がり下さい」と勧めてきた。


黒沢さんは言われるがままスリッパへと履き替える。
私も真似をしてピンク色の小花柄のスリッパに履き替え、二人が歩き出した方向へと足を向けた。

廊下には薄いベージュピンクの四角いタイルが張り巡らされ、壁には白い塗装が施してある。

一見ロマンティックな雰囲気には設えてあるけれど、外と同様、中もやっぱり寒々しい。



(本当に要塞みたい……)


実際の要塞など知りもしないがそんな風に思った。
黒沢さんに向かい、ここは軍事の拠点ですよね?と訊ねたくなってくる。



「先ずはリビングでお茶でもどうぞ。それからお夕食の準備をしてありますので、お部屋で着替えられましたら食事室へおいで下さい」


廣瀬さんはそう言いながら、玄関から数えて三番目のドアを開けた。

中に入るとどう見ても二十畳以上はありそうなリビングで、壁際には暖炉があり、他にも楕円形の大きなテーブルや革製のソファセットなどが置いてある。



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