あなたの心を❤️で満たして
疑ったが、自宅の売却金は確かに銀行口座に振り込まれていて、それが正しい土地や家屋の値段なんだろうかと思うような金額が記されていた。

振り込み主は聞いたこともない男性の名前で、一体何処の誰なのかを不動産屋に訊ねてみたが、プライバシー保護の為教えられません…と断られ、泣く泣く諦めるより他なかった。


いざとなれば、この振り込まれたお金を直接返しに行き、あの家に住み続けてやろうと企んでいたけれどそれも出来ない。

おまけに三上さんが来た翌日から美容師さんや結婚式場の関係者が訪ねて来ては連れ出され、あっという間にお披露目式に向けての準備が整えられてしまう。


引越しの支度は、私の留守中に引越し業者が来てやった。
祖父母の荷物はコンテナをレンタルし、一先ずそこに預けてあると教えてもらった。



『私の荷物は?』


『婚家の方に運んであります』


『それは何処なんですか!?』


三上さんに電話して訊くと、式の後で夫となるべき人が連れて行ってくれる筈、と答える。

狐につままれたような気持ちで式の前夜を迎え、明日からは『花菱留衣』ではなく『黒沢留衣』と名乗るーーー。



< 4 / 283 >

この作品をシェア

pagetop