あなたの心を❤️で満たして
シルバーのドアレバーを下げ、薄く開いたドアを押し開ける。
部屋の中には淡い夕日が差し込み、ドアの直ぐ横にあったスイッチで明かりを点けると、見慣れた自分の荷物達が出迎えてくれた。



「うわぁ……ピンク」


壁紙が淡い桜色に近い。
腰板はブラウンで床板は焦げ茶色。
天井は壁紙よりも濃いピンク色で塗られていて、正に女子の部屋といった雰囲気だ。


「可愛いけど…落ち着かない…」


最初からこの部屋はこういう色合いなのだろうか。
まさかとは思うけれど、私の為にこんな感じの部屋にしたという訳ではないよね。


使い慣れたタンスを触り、学生時代から使ってきたデスクを撫でてから窓辺に近付く。
外ではいつの間にか日が暮れ、街の向こう側に太陽が消えようとしている。


「それにしても殺風景な景色」


街並みが見渡せているから、まるで宮殿やお城からの景色の様にも思えるけれど、家ばかりが目立って見えている所為で、殆ど木も緑も見えない。


「こんな家に住むなんて……」


嫌だと口にも出せやしない。
黒沢さんと離婚しない限り、この家からは出ることも出来ないのだ。


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