あなたの心を❤️で満たして
古い床材が軋む廊下を走り抜け、いつも祖父母が使っている部屋のドアを開けても空。

がらんとした空間が広がっているだけで人の気配も感じない。
キッチンもリビングも何処にも二人の姿はない。
次第に焦りだして、『何処!?』と叫びながら探し回った。



『そうだ!屋根裏かもしれない』


二階へと戻り、一番端の部屋にある天井に続く階段を駆け上がる。
真っ暗で電気も点いてない部屋の中には、屋根の形がぼんやりと浮かぶだけで二人はいない。


『あ、もしかしたら庭なのかも』


あの桜の木を見ているのかも。
そう思って階段を飛び降り、床が抜けてしまいそうな程大きな足音を立てて廊下を走り抜け、玄関のドアノブに手を掛けた。


ドアを開けた瞬間、ふわり…と春風が舞った。
それに靡くように髪の毛が乱れ、視界を妨げられながら裏に植えてある桜の木を目指す。


彼処に行けばきっと二人に会える。
会ったら大きな声で「ただいま」と言って、三人でまた一緒に暮らそうね…と言うのだ。



家の側面を横切り、ワクワクする様な気持ちで顔を覗かせた。
桜の花弁が風に舞って流れてくる。
その先に必ず二人はいると思ったけれどーーー




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