あなたの心を❤️で満たして

『……いない…』


茫然と立ち尽くす前には一本の桜。
チラチラと花弁を落としながら咲き乱れ、その花弁は私の足元へと降り注いでくる。


『お祖父ちゃん何処へ行ったの!?…お祖母ちゃん、返事をして!』


一人きりになるなんて思ってもいなかった。
いつまでも三人で仲良く暮らせると信じていた。


『お祖父ちゃん!お祖母ちゃん!』


どうしてか胸が苦しくて、泣きだしそうになるのを堪えなきゃ…と我慢している自分がいる。

でも、目の中では涙が溢れそうになっていて、それを零すまいと必死になって目を凝らす。


視界の中では、桜がただ咲き乱れているだけ。

その花弁が切なそうに私の方へと舞い落ちてくるだけ。




「…ひぃ…くっ…」


声が漏れると、急に目から液体が零れ落ちた。
溢れかえる様に、堰き止めることも出来ないくらい多量に。


「やだ……一人になんてなりたくないよ……」


声が震えている。
まるで泣き声のように聞こえるけれど、これは私の声なの?



「お願い……誰か来て……」


心底願うようにして足元へと崩れ落ちた。
身体中の力が抜けて、だらん…と腕も伸びきる。


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