あなたの心を❤️で満たして
椅子に向かっていた足を止めると、廣瀬さんは「いいえ」と断った。


「ここに居て下さい」


なるべく自分でやってしまいたいのか、手伝うのを拒む。


「奥様はここでお坊っちゃまの相手をなさってて下さい。昨夜は徹夜だったらしくて、放っておくと寝そうですから」


「え?」


視線を彼に移すと新聞を読んでいる目元が伏せ、うつらうつらと頭が揺れている。


「ほら言ってる側からコレですからね。お坊っちゃま!奥様が来ましたよ!」


廣瀬さんが少し大きめの声を出すと揺れていた頭が止まり、のっそりと顔を上げて私のことを見つめた。


「…ああ…おはよう…」


寝ぼけ半分な顔つきで挨拶をし、直ぐに目線は伏せられた。


「昨夜は済まなかった…」


頭を項垂れると隣に立っている廣瀬さんが満足そうな笑みを浮かべる。
それを見ていると気の毒な気がして、いえ別に…と答えて座った。


「では支度してまいりますので」


廣瀬さんはいそいそと食事室を出て行く。
私は彼女が出て行ったドアを見つめ、次に何を話すべきかと悩んだ。



(朝方のアレ…この人だったのかな……)


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