あなたの心を❤️で満たして
(どんな顔して寝てるんだろう。ちょっと見てもいいかな)


カタン、と椅子から立ち上がり、彼の顔が向いている方向へと回った。
床に膝が着きそうなくらい屈んで、どれどれ?と見上げる。


(ぷっ。子供みたい)


唇が半開きで前歯が少し覗いている。
伏せられた瞼の縁には長い睫毛が生え揃ってて、いいなぁ…と囁いた。


(あ…この人って二重なんだ)


瞼の上に、筋がくっきりと見えている。
昨日はじっくり顔も見れなかったから初めて知った。


(子供っぽいけど綺麗な寝顔…)


可愛いと言ったら失礼なのかもしれないけれど、男性の寝顔は祖父しか知らないからそれに比べるとやっぱり可愛い。


じーっと足元にしゃがんだまま顔を見続けてしまう。
膝を追っている足が痺れそうにならなければ、入ってきた廣瀬さんが驚くまで眺めていたかもしれない。




「…おやまあ、やっぱり沈没しましたか」


食事を乗せたトレイを抱えてやって来た廣瀬さんは呆れ、テーブルの上にトレイを置くと彼の体を揺らし始めた。


「お坊っちゃま!厚志様!朝食ですよ!」


肩を揺らしたり、トントンと背中を叩くとやっと顔が起き上がった。


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