あなたの心を❤️で満たして
「そんなに眠たければ食べてからにして下さい。せめてフルーツだけでもいいから口にして」


トンと前に置かれたボウルの中身はブルーベリーとイチゴ。
私の前には、ハムとチーズとレタスがサンドされたクロワッサンとハチミツを垂らしたヨーグルトも置かれてある。


「奥様はしっかり食べて下さいね。この唐変木は朝が苦手で食欲がないのはいつもなんです」


お坊っちゃまと言ったり唐変木と言ったり、廣瀬さんは面白い人のようだ。


「頂きます」


手を合わせてからクロワッサンを皿から掬い上げた。噛むと表面はパリッとした焼き上がりで、それがチーズやハムとも合っている。



「美味しい!」


流石はプロ。
作り方を教えて欲しいかも。


「ほら、奥様を見習ってどうぞ」


廣瀬さんにとって黒沢さんは手の掛かる子供みたい。
無理矢理フォークを持たされた彼は、仕様がないな…という顔つきでイチゴを刺し、口の中に押し込んだ。

もぐもぐと噛み締め、ゴクンと飲み込む。その様子をちらっと見て、どんなリアクションをするのかと思った。



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