あなたの心を❤️で満たして
「一杯分に対して豆をお匙でニ、三杯目くらい入れて、ミルレバーを回して下さい。その粉をフィルターに入れて…そうそう。お湯は熱湯だと渋くなり過ぎるから蒸気を飛ばしてから注いだ方がマイルドで美味しいコーヒーになりますよ」


淹れながら側で丁寧に教えてくれる。
おかげで初心者の私でも香りのいいコーヒーを淹れられた。


「ついでに持って行ってあげて下さい。お料理の続きは私一人でも出来ますから」


ゆっくり話しておいでなさいと言われ、少し照れくさいな…と思いつつ、彼の分と自分の分をカップに注ぎ入れて運んだ。

リビングのドアをトントンと叩いても返事がなくて、そろっと開けるとテーブルに付いている彼は本を片手に黙々と読んでいて……。



(すごい集中力)


感心しながら近寄り、カチャ…と側にカップを置くと、淹れたてのコーヒーが香ったのか顔を上げ、ちらっと私の方を見返した。



「…ありがとう」


一言お礼を言うとカップを取り上げて飲み込む。
砂糖もミルクも入れないブラック派で、猫舌でもないから熱くても平気だ…と廣瀬さんが言っていた通りの飲みっぷりだ。


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