あなたの心を❤️で満たして
「どうですか?美味しい?」


ゴクゴクと水のように飲んでいる彼に訊ねると、カップを口から離し、不思議そうな目を向けてくる。


「私が豆を挽いて淹れたんです。だから上手く出来てるか不安で」


黒沢さんは一瞬目を見開き、それからカップの中を覗き込んだ。



「……別にいつもと変わらず特に違和感もなかったけど…」


それは美味しいという意味なのか。
それとも、誰が淹れても味に大差はないという意味か。


「そう…ですか」


なんかガッカリ。
美味しいと言われなくてもいいけど、もう少し口の利き方があると思う。

自分のカップにはミルクを入れて飲んだ。
自分で挽れたからという訳でもないけれど、かなり美味しいよ、このコーヒー。


(香りがいいよね。豆から淹れるせいかな)


インスタントとは違う。
これを知ったら他のコーヒーは確かに飲めないかも。


ゆっくり味わって飲む私とは違い、黒沢さんはさっさと飲んで空にしている。


(飲むのも食べるのも早いな)


既に目線は本に戻り、さっきから一体何を読んでいるのだろうかと窺った。

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