あなたの心を❤️で満たして
菜箸を置くと廣瀬さんは私の方へ振り返る。ちょっと提案があり、それをしてもいいかどうかを訊ねたかった。


「ご飯はおにぎりにしたいんですけど」


そのままでも私は十分食べれる。
おにぎりにしたいのは旦那様の分だ。


「宜しいですよ。思うようにお作りになって下さい。私はお坊っちゃまを起こしてまいりますので」


にんまりと笑うとキッチンを出た。

私は冷蔵庫から梅干しの入った瓶を取り出し、種から実を外して紫蘇と一緒に刻む。
それを炊き上がったばかりのご飯の中に混ぜ込み、俵型のおにぎりにして皿の上に置いた。


「美味しそう。早く食べたい」


久し振りに作った朝食を前にウキウキする。
トレイに乗せながら胸が弾み、黒沢さんが早く起きてこないだろうかとソワソワした。



「お坊っちゃま!待って下さい!」


廣瀬さんの怒鳴るような声が聞こえたのは、トレイを手にキッチンを出ようとしていた時。
バタバタと駆ける足音に背中がビクッと伸び、何事があったんだろうとトレイを置いて飛び出した。



「あ……」



階段を駆け下りてきた黒沢さんは既にスーツで、その後を追うように廣瀬さんが駆け降りてくる。


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