あなたの心を❤️で満たして
今ここであの桜の花を見たら、きっと何処へも行きたくなくなる…と判断した。


「何か忘れ物ないかなと思って気になったんですけど大丈夫です。荷物は全部バッグの中に入れたんでした」


起きて直ぐに支度を始めたのだ。
おかげで何も食べる時間がなかったくらい忙しかった。


行きましょう…と黒のパンプスを履き、住み慣れた我が家の玄関から外へ出た。

私が幼い頃から祖父母はこの家から嫁に出したいと言っていた。春がいいね…と、笑いながら語っていたっけ。


（お祖父ちゃん、お祖母ちゃん、思い通りになったよ……）


今日からは涙を見せないと決めたから、泣きそうになっても我慢する。

金色に光る丸いドアノブを握ってドアを閉めると、鍵を差し込んで右に捻った。



（……バイバイ。私の家…）



連絡しておいた不動産さんに鍵を渡してから会場へ向かった。
ホテルへ着くと、相手はまだ到着していないというので控え室へと通されたのだーー。


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